つげ櫛とあかね櫛について

現在、市販されているつげ櫛には、「さつまつげ」か「本つげ」と刻印されている二種類があります。
「さつまつげ」と刻印してあるものは、国産のツゲ科ツゲ属という日本固有の品種を使用して作られており、この名称は産地が江戸時代の薩摩藩(現在の鹿児島県)であることに由来。
「本つげ」と刻印されているものは、シャムツゲと称されるアカネ科クチナシ属のタイ(旧国名:シャム)からの輸入材で作られています。

ツゲは、緻密で硬く割れにくい特質を有し、細かい細工に適しています。加えて光沢が美しいことから、櫛の材料として昔から使われており、万葉集でも詠われています。また、印鑑としての利用が一般的で、将棋の駒としても一級品とされ、そのほかでも需要が大変多くありました。一方で、ツゲの木は成長が遅く、資源的に大量に供給できるものではないことから、高価でした。そのため、材質が類似した代替材が輸入されており、わが国ではこれを「シャムツゲ」と呼び、櫛の材料として長く使用してきたのです。

しかし、シャムツゲは、主要な輸入先であったタイ国の政府が2013年に突然輸出を全面的に禁止。近い将来に国内の備蓄がなくなり、櫛の生産ができなくなるという危機感から、同じアカネ科でシャムツゲと同様の代替材とされていたカステロ材を使用し、「あかね櫛」が生産されるようになりました。

「カステロ材」は、南米産のアイボリーウッド、パロブランコ(白い木)とも呼ばれているアカネ科カリコフィルム属。木肌が緻密で仕上がりが美しいことから、16世紀頃にリコーダーといわれる縦笛などの木管楽器の材料として用いられはじめました。その後も現在まで、様々な用途に幅広く用いられたことから、この種の木材も世界的に枯渇傾向にあります。

京都産業技術研究所に上記三種の比較分析を依頼したところ、木材の硬さや強度を表わす基準のひとつである気乾比重及び摩擦係数の測定結果では、シャムツゲ材、カステロ材ともに、さつまツゲには僅かに及ばないものの非常に近い数値を計測。

気乾比重の高さは緻密な細工に適し、木肌は美しく、丈夫であることの証明です。そして、摩擦係数の低さは、髪を梳かしたときに生じる静電気の発生が極めて低いことの証明です。天然素材の良質な特質を備えた、毛髪にやさしく、なめらかで心地よい使用感をぜひとも手に取っていただき、ご愛用ください。

本つげ

本つげ

さつまつげ

さつまつげ

あかねつげ

あかねつげ